バイヤー・買い手

アパレルなど、小売業界ではバイヤーが大きな役割を果たします。ここではバイヤーとして転職をする場合に重要となる、転職理由や志望動機に関して解説していきます。
これらは転職活動における比較的初期の段階から考える事項で、初歩的でありつつ最も重要なポイントでもあります。
例文も紹介しますので、ぜひ当記事を参考に転職を成功させましょう。

バイヤーについて

バイヤーは、主に商品の仕入れを仕事とする者のことで、「買い手」と呼ばれることもあります。
小売業界では特に重要な役割を果たし、その他様々な業界でも仕入れは行われていますので、バイヤーは様々な企業で活躍していると言えます。
特にバイヤーに求められている力は調査力です。自社が扱っている分野のトレンドを調査し、事業内容に合わせて食品や洋服、ジュエリーなど必要なものを調べなくてはなりません。
つまり目利きをしているのです。また、バイヤーはより良いものを見定めるだけでなく、企業の利益を伸ばすために価格交渉も行います。メーカーと交渉をして、良好な関係を維持しつつも仕入れ価格の調整を図るのです。

場合によっては商品開発から販売の計画策定、予算管理まで、幅広い業務を担うこともあります。目利きができる優秀なバイヤーであればこのように様々な仕事が任されますし、転職活動も有利に進められます。

バイヤーが転職理由・志望動機を考える際に重要なこと

選考においては、ほぼ確実に転職の理由、志望動機が聞かれます。応募時に提出する履歴書に記載したり、面接時に聞かれたりすることもあるでしょう。
なぜ転職をしたのか、なぜその企業を希望するのかを述べることになりますが、その書き方が重要です。
例えば前項でも説明した通り、バイヤーには情報収集能力、顧客・市場の分析能力、買い付け、価格交渉、販売管理などのスキルが求められます。そのため、転職理由や志望動機からもこれらの能力があると評価してもらえた方が良いでしょう。

以下では、転職を成功させる上で重要なポイントをまとめていきます。

バイヤーならではの内容であること

バイヤーならではの内容であることが大事です。
そこで「何がバイヤーならではなのか」と考えるとき重要になるのが、ある理由に対して「バイヤーにあてはまるが、他の職種にはあてはまらない」かどうかを考慮することです。

例えば、アパレル系で就職をしたい場合、「洋服が好きだから」という理由は一見してもアピールが弱いです。アパレル業界のあらゆる職種にあてはまってしまうからです。
しかし、「洋服が好き」という理由に加えて「商品の買い付けから関わりたい」という理由も入るとバイヤーに近づきます。ただ、これでもバイヤーにだけ当てはまるとは言えません。発注業務との区別がないからです。
そこで、「まだ世間に知られていない良品を広めたい」「日本に来ていない商品を国内でも売り出したい」などといった内容を含めていくとバイヤーを希望することに説得力が生まれてきます。

「アパレルに興味がある」「バイヤーになりたい」という情報だけだと担当者に本気度が伝わりませんので、バイヤーだからこその内容を含ませてバイヤーとしての転職であることをアピールしましょう。

消費者側の視点・経験も含めること

消費者側の視点も含めることでより説得的な内容にすることができます。
バイヤーとして大きな成果を出した実績がある方なら、その経験をアピールしやすいですが、そういった実績がない方はこういった別視点を含ませるというやり方も検討しましょう。
例えば、あるバイヤーが良い商品を見つけ出したことにより大きな経済効果を生み、そのお店がある地方が活気づいたという事例に対し、自分が感じたことなどを含めます。
「バイヤーの仕事がこのような影響を及ぼすということを知り、自分もやりたいと思った」という形でまとめても良いですが、「バイヤーの成果」と「自分もやりたい」の間に、自然かつ納得のいく理由付けをしたほうがより良いでしょう。
ただの傍観者の視点ではなく、消費者としてどのように関与したのか、どのような流れで「自分もやりたい」になったのかを説明します。

業界や仕事内容を理解しておくこと

当然ですが、バイヤーの仕事内容、業界への理解も大切です。
バイヤーになりたいという熱意が伝わったとしても、企業としては、その者に成果が出る見込みがなければ雇えません。特に新卒採用ではなく、転職活動をしている者に対してはより実力が評価される傾向にあります。

バイヤーとして過去活動をしていたのであればその実績が見られますが、特段アピールできる成果を持っていないケースもあるでしょう。
そこで、バイヤー経験の有無問わず重要なのが、バイヤーそのものの仕事内容を的確に捉えられているということ、それと業界研究ができているということです。そうすると採用担当も将来性を評価しやすくなります。
実力を示せるような実績がなくても、しっかりと調査し、必要な知識の学習に励んでいることが伝われば、今後もまじめに働いて企業の利益に繋がるかもしれないと思ってくれやすいです。

バイヤーとしての適性があることを示すこと

前項の内容は、バイヤーとして働く前向きな姿勢、成果を出すために必要な努力をしそうな人材だと示すことに繋がります。
このことに加え、バイヤーとしての適性、素質があるということもアピールしましょう。例えばバイヤーの場合、一般的に以下の能力が求められます。

  • コミュニケーション能力
  • 情報収集能力
  • 交渉力
  • 行動力
  • 決断力
  • 語学力

社外の人物とも交流する機会がありますし、コミュニケーション能力が大切です。また、礼儀正しい対応ができるかどうか、清潔感があるか、自己主張をしっかりとできるか、といったことも見られるでしょう。
そのため書類審査および面接においても、こういった力があることを伝わるようにしなくてはなりません。特に面接はそれ自体コミュニケーションの場ですので、自分の喋る内容だけでなく、その喋り方も判断材料になります。
そこで、無難に質問を流すのではなく、積極的に自分の意見を発するようにすべきです。その上で意見の内容に配慮をします。

なお、自己PRに関しては他のどの職種でも同じですが、エピソードを交えて伝えるのが効果的です。「私には行動力がある」と述べるだけでは何の説得力もありません。具体的なエピソードを喋り、相手方に「この人には行動力がある」と思わせなければなりません。

語学力に関しては常に必要なものではありませんが、実務で使う機会のない企業でも外国語に強いと優遇されるケースは多いです。特に交渉を生業とするバイヤーにとってはその重要度は高いと言えるでしょう。

提出書類の内容と面接の内容との整合性

提出書類に記載する志望動機等の内容は、今後の選考にも影響します。その内容をもとに採用担当者が質問をしてくることも考えられますし、上手く記載することで質問内容を誘導することも可能です。
逆に、記載した内容と矛盾する内容を話してしまった場合、一気に信用を失い、採用から遠のいてしまうでしょう。そのため転職理由や志望動機を考える際には、その後の採用フェーズも意識しなければなりません。

転職理由・志望動機の例文

最後に良くない例、良い例を挙げます。以下を参考の一つにして、具体的なイメージを掴みましょう。

良くない例

まずは良くない例から挙げます。

「私は、ファッションを学ぶ学校に通い、洋服について知識を身に付けてきました。そこでファッション業界への就職を目指すようになりました。

学校での勉学とは別にフリーマーケットやネットオークションもよく使っており、色んな商品を探すことの楽しさを覚え、バイヤーになりたいと思うようになりました。
これまで、友達に頼まれて商品を探し、購入するということも何度も行ってきました。また、海外ブランドにも興味がありましたので、色んな方を相手に取引経験があります。

こういった経験を活かし、ファッション業界を牽引する御社にて働きたいと思っています。」

バイヤーを目指すまでの導線が弱く、志望動機としてあまり説得的な内容になっていません。また、エピソードに対して自分が持っている能力が上手く示せていませんし、なぜその企業を希望するのか、というところにも触れられていません。

良い例

続いては良い例です。あくまで一例ですし、実際には自分や応募先、具体的な業務内容に応じて作成することが大切です。

「私は、洋服が大好きで、ファッション業界で就職することを目指してきました。そこで高等学校を卒業してからは、ファッションに関して深く学ぶために専門学校へ入学しました。
専門学校ではファッションのことを学びつつ、プライベートでもフリーマーケットやネットオークションを使って珍しい洋服を探すことを趣味としていました。そこで価格交渉をし、一般に流通していない商品を手に入れることの楽しさを覚えました。
発掘した洋服は学校でも好評で、それをきっかけに友達から洋服やバッグの購入を頼まれては、商品を探し、交渉し、手に入れるということを何度も経験しました。

そんな中、徐々に活動規模も大きくなり、海外の商品にも手を伸ばすようになりました。現地の方とも円滑に交渉ができるよう英語の勉強にも力を入れ、何ら問題なく英語圏でも活動ができるようになっています。

元々は漠然とファッション業界への就職を考えていましたが、こうした経験を通して、バイヤーとして働いてみたいという意欲が湧いてきました。
特に御社は企画力に強みがあり、海外の珍しい商品まで揃っており、その点素晴らしいと感じています。そのため、御社なら私の過去の経験から得た知識などが存分に活かすことができると思い、応募いたしました。」

なぜバイヤーになりたいのかが明確で、行動力や、目標を達成するための勤勉さも示すことができています。また、なぜその企業なのかというところにも言及しています。

バイヤーとして働くため、採用時に重要なことをまとめました。就職を成功させるためには、志望動機を考える段階から戦略的に取り組む必要があります。同じ人物でも伝え方によって採否に影響してきますので、慎重に記載すること、述べることを考えていきましょう。