「マーチャンダイザー(MD)」はアパレル業界で活躍する職種です。商品の開発段階から販売戦略まで、幅広く携わります。販売員とも、開発業務のみに従事する者とも異なり、全体を見渡して最適化を図るという特徴があります。ここではこのマーチャンダイザーという職を目指す方に向けて、マーチャンダイザーになるために重要なこと、就職活動において最初の関門となる志望動機の書き方などを紹介していきます。
マーチャンダイザーになるには
消費者のニーズに応えて良い商品を作り、需要に適合する形でその商品を供給し、売り上げる、この一連の流れを効果的に進めていくためにはマーチャンダイザーの存在が重大です。
なぜなら、マーチャンダイザーは企画開発・流通・販売などを総合的に管理する立場にあるからです。
そもそも「マーチャンダイズ」が語源となっているのですが、この言葉には「商品化計画」という意味があります。換言すると「消費者が欲しい商品を適切な数量・価格・タイミングで供給する」と表現できます。
そのため様々な業界にも必要な仕事なのですが、「マーチャンダイザー」と呼称されるのは主にアパレル業界です。当記事でもアパレル業界におけるマーチャンダイザーであることを念頭に言及していきます。
まず、マーチャンダイザーになる方法ですが、決まったルートしかないわけではありません。ただ、狙ってマーチャンダイザーを目指すのであれば、以下のようなルートを辿られていると比較的就職しやすいと考えられます。
ファッション関連の学校を出ている
すでに説明した通り、マーチャンダイザーは資格などが条件とされることは少なく、学歴に関しても制限を設けていないことが多いです。ただ、アパレル業界で従事することを考えれば、この業界やファッションについての知識・経験を有していることが就職活動を有利に進める1つの要素となり得ます。
この観点からは、ファッション関連の学校を出ていることが役に立つことがあります。いきなりマーチャンダイザーとしての採用ではなく、ファッション関連の企業に就職してゆくゆく目指すというケースでもこの経歴が役に立つでしょう。
流通や経営、商学が学べる学校を出ている
前項同様、学校でマーチャンダイザーに関わる分野を専門的に学んだ経験は就職活動での武器となり得ます。ファッションやアパレルに直接関与していなくてもかまいません。特にマーチャンダイザーは幅広い領域を取り扱うため、流通や経営、商学、マーケティングといった分野の知識や経験も方法次第で良いアピール材料となるでしょう。
また、ある分野の研究において身に付けたスキルを就職活動においてアピールすることも可能です。例えば、データに基づいて判断していくことがマーチャンダイザーも大切ですので、自身が専門的に行ってきた取り組みに関して本格的なデータ分析をしているのであればそのスキルを示すことは有効でしょう。ただし、漠然と「データに基づいた分析をしてきました」などと伝えるのは効果的とは言えませんので、具体的、説得的に伝えることが大事です。
アパレル業界で就職している
未経験者がマーチャンダイザーとして採用され、すぐにその仕事に取りかかるというのはあまり期待できません。そのため、アパレル業界で就職されている方は、有利だといえるでしょう。
ただし、ただアパレル業界に就いて待っていれば自動的になれるというものではありませんので、その企業の特色を理解して、戦略的に行動していかなくてはなりません。例えば大手企業の場合、単なる販売員としての就職よりも総合職としての経験があると有効的です。その他、バイヤーであったり営業であったり、その企業においてどんな職に就けばマーチャンダイザーに近づけるのかを考え、ルートを選択していくべきでしょう。
小売・流通業界で商品開発等に携わっている
未経験での就職が難しい以上、転職でマーチャンダイザーを狙い、その前段階として小売や流通などの業界で経験を積むという方法もあります。もちろん、仕事内容として近い領域を取り扱うことが大事で、特に商品開発などに携わっているとアピールがしやすいでしょう。
志望動機を書くときの基本
企業の規模が大きくなるほど、多段階的に就職活動が続きます。書類審査、複数回に渡る面接、場合によっては筆記試験などもあるかもしれません。中小企業の場合には比較的シンプルな選考フローとなることが多いですが、いずれにしても「志望動機を考える」というプロセスは欠かせません。
そして志望動機の書き方は、就職先の業界や企業、希望する職種によって変わってくるのですが、共通するセオリーも存在します。
例えば、「他にも似たような仕事ができる企業がある中その企業を選んだ理由」「オリジナルの内容であること」「ある程度記入欄を埋めること」、転職の場合には「なぜ現企業ではだめで、なぜ応募先の企業でなくてはならないのか」といったことを簡潔にまとめていかなくてはなりません。
記入欄をできるだけ埋めるといったことは必ずしも重要とは言えませんが、採用担当者によっては良くない印象を持つリスクがありますし、こうした書類に目を通す者の気持ちになって作成していくことが大切です。
そこで、オリジナルの内容にすることはもちろん、オリジナルの内容であると相手が感じるような書き方をすることも大事です。
マーチャンダイザーを目指す方が特に押さえておくべき志望動機のポイント
次に、マーチャンダイザーを目指す場合に特に押さえておきたいポイントをまとめていきます。
マーチャンダイザーになりたい旨伝える
なかなかマーチャンダイザーをピンポイントで募集していることはないかもしれません。そのため広く人材を募集している場合でも、志望動機にて「マーチャンダイザーとして働きたい」と伝えることが大事です。マーチャンダイザーとしての人材を求めていない場合には採用されない可能性が高まるかもしれませんが、ミスマッチを防ぐという観点ではこちら側からこの意思表示をすることも大切です。
一方、現状はマーチャンダイザーを求めていなかったとしても、先に希望を伝えておくことで将来的に配属をしてもらえるかもしれません。さらに、なんとなくアパレルへの就職を希望する者に比べて、明確にマーチャンダイザーという職を希望しているとその熱意も伝わりやすいです。ただし、本気度を感じ取ってもらうにはなぜマーチャンダイザーなのか、ということも併せて伝えることが大事です。
資格をアピールする
何か検定や資格を取得していることが条件となり採用可否を分けるというケースはあまりないでしょうが、やはり有資格者だと一定のスキルや知識を有していることのアピールがしやすいです。
例えば「ファッションビジネス検定」や「販売士資格」などは関連性が強いためアピール材料として使いやすいです。
ファッションビジネス検定は、ファッション商品の企画、生産から流通に渡る業務で使うスキルの向上を目指すものです。3級で基礎、2級で応用知識を身に付け、1級では高度なビジネス戦略や計画立案力、マネジメント力などが判定されます。1級では「マーチャンダイジング戦略」としてファッションMD理論、新ブランドのMDや既存ブランドのMD再構築、アパレルメーカーの素材調達・生産管理、小売店舗のMDなどの知識が問われますので、マーチャンダイザーとしての汎用的な力を身に付けることができるでしょう。
販売士資格では、接客技術や販売といったところがフォーカスされますが、顧客ニーズの把握、商品開発や仕入れ、物流などの分野も取り扱います。こちらも1~3級で構成され、3級だと売場の販売員、2級だと売場の管理者クラスですが、1級になると経営者クラスの内容になってきます。1級を取得していればマネジメントや商品開発、マーケティング政策の立案といった力があることを示すことができるでしょう。
こうした資格や検定への取り組みは就職活動の時点のみならず、就職後の取り組みとしても有効です。役に立つ知識を備えていれば実務にも対応しやすいですし、資格取得に向けた努力をしていることを評価してもらえる可能性があります。
しっかりと市場調査を行う
資格がある場合にはその分野における知識やスキルがあることの信頼を得やすいですが、ただ言葉で「マーチャンダイザーに必要な知識を持っている」と示すだけでは伝わりにくいです。
そこで、記載内容から特定の知識を有していると、間接的に読み取れるようにすることも大事です。例えばマーチャンダイザーにとって調査能力はとても大事です。市場の情況が把握できていないといけないからです。そこで、マーチャンダイザーを目指すのであれば、市場への理解を示すことが1つアピールに繋がるでしょう。応募にあたって十分な市場調査を行いましょう。そしてそこから得た知見を基に作成していくと良いです。
志望する企業の調査を行う
市場の調査と同じく、その応募先企業の調査を行うことも大切です。これは就職活動を成功させる上でも大切ですが、ミスマッチを防ぎ、自分が望む環境に身を置くためにも大切なことです。
その企業ではどんな商品を扱っているのか、どんな販売戦略を採っているのか、社風や企業理念など、分かる範囲で下調べをしておきましょう。
その企業の特色が把握できれば、自分の力を使ってどのように貢献ができるのか、ということも示すと良いでしょう。ただ、できるだけ具体性をもって、実現可能性のある内容でなくてはなりません。
(経験者向け)具体的な数値で実績を示す
過去にマーチャンダイザーとして働いていた、あるいは別の企業で勤めている、という転職のケースでは、過去の実績を数値で具体的に示すことが大事です。自分の立案によって売り上げをいくら上げることができた、これだけの効果が得られた、といったことがわかりやすい形で伝わることが大切です。特にマーチャンダイザーとしての就職を狙うのであれば、就職活動の段階から説得的な資料を示して説明できることが必要です。